詐欺犯罪から親を守る
詐欺犯罪から親を守る
高齢者がまきこまれる犯罪といえば、「オレオレ詐欺」がすぐに頭に浮かんできます。
注意を喚起する広報が積極的に行なわれているものの、2020年の被害額はなんと121億6000万円に及びました。
ある一人暮らしの高齢女性Aさんの話です。
ある日の夜、一本の電話がかかってきました。
電話の主は消費者金融を名乗る男で、いきなり乱暴な口調で話してきたといいます。
その男によると、Aさんの甥がその女性を保証人としてお金を借り、返済が滞っているというのです。
もちろん、Aさんに心あたりはありません。
その旨を告げると、激高した男は、近くに居る者に向かって「すぐに(Aさんの自宅の)近所へ電話しろ」と怒鳴りました。
Aさんは慌てて、お金を支払うと返事をして、相手が指定した翌日の時刻に自分から電話することも了承しました。
電話が終わってからしばらくして落ち着きを取り戻したAさんは、遠方に住む息子さんに電話をすることにしました。
息子さんは驚き、お金を支払う必要のないこと、すぐに電車で1時間ほどのところに住むAさんの娘のところへ避難することを指示しました。
息子さんは翌日になって知り合いの弁護士さんに相談しましたが、新手のオレオレ詐欺かもしれないので、念のため警察に届けたほうがいいとの助言をもらいました。
警察は民事不介入の原則がありますから、すぐには捜査に入ってくれませんでしたが、いつもより注意してAさんの自宅の近くの見まわりをすることを約束してくれました。
娘さんの家に避難していたAさんは、普段の連絡は携帯電話ですることにして、脅してきた者に番号を知られている家の電話には出ないようにしました。
しばらくして自宅に戻ってみると、電話が初めてかかってきた日から1週間ほどの間は、その悪徳業者から頻繁に電話がかかってきたようですが、それ以降、電話はかかってこなくなりました。
このケースの場合、脅され、そして騙されそうになりました。
実際、Aさんはお金を支払うことと翌日電話をすることを相手に伝えています。
息子さんはそれを咎めたり、蔑んだりしませんでした。
それは高齢の親に対して正しい応対の仕方です。
もし、非難や嘲笑をしていたら、親は落ち込み、同じようなことがあっても次は息子さんに連絡をしてこないかもしれません。
子どもとしては、怪しい電話に騙されないために、例えば、合言葉を決めておいたり、直接悪徳業者と話をしないために留守電を利用したりするようにしてください。
また、防犯機能のある電話機もありますし、それをレンタルできる自治体もあります。
悪徳業者だけでなく、たとえ大手企業であっても油断はできません。
証券会社やデパートなどの営業マンの中には、言葉巧みに高齢者に商品、しかも高額の商品を勧める者もいます。
また、郵便局員がかんぽ生命の不正販売をして世間から大きな批判を浴びました。
高齢者を狙う業者は後を絶ちません。
これらの相談を受けることも地域包括支援センターの役割です。
これからは、地域で高齢者を守る時代になりました。
同センターをはじめとして、担当のケアマネジャーや民生委員に対して事前にお願いしておくことをお勧めします。
また、ご近所の人たちに普段からの挨拶も欠かさないようにするべきでしょう。