介護事業とリスクマネジメント
介護事業とリスクマネジメント
介護事業をめぐるリスクは非常に多岐にわたります。
介護事業者はそれらを正しく把握し、経営上のそれぞれのリスクに対し、的確に必要な対策を講じなければなりません。
リスクマネジメントは企業経営において重要な要素となっていますが、介護事業においても例外ではありません。
介護事業におけるリスクとは
介護事業は心身に障害のある方を支援するサービスであり、高い公共性が課せられています。
介護保険は「契約に基づくサービスの利用」制度なので、利用者・事業者双方において、お互いの権利・義務関係が明確です。
介護事業所においてのリスクには様々なものがありますが、その中でも大きなリスクは、利用者や家族からの信頼を失ってしまうことでしょう。
同時に、それが社会的な信頼を失うことにもなるのです。
例えば、虐待事件の発生やサービス中の事故が多発してしまった場合、利用者や家族に対する信頼を裏切ることになります。
近年、利用者の権利意識の高まりから、これまでは顕在化しにくかった介護サービスにおける事故などの訴訟が増加しているのです。
介護事業におけるリスクマネジメントとは
従来、福祉・介護事業におけるリスクマネジメントは、主に介護サービス提供における事故発生の予防が中心でした。
しかし近年、感染症や災害、ハラスメント、職員による情報漏洩といったリスクも生まれており、その対応も含めたリスクマネジメント体制の構築が急務となっています。
介護保険法令等では、事故防止のための指針の整備や職員に対する研修を行うことなどが定められました。
一方で介護事業の経営環境は厳しさを増しています。
介護事業者に対してリスクマネジメントの研修や解決方法を提供するビジネスが登場しました。
この種のビジネスでは、必要最低限のコストで最大限の安全と安心を提供できることが、クライアントのニーズを満足させるための課題となっています。
個人情報に関するリスク
介護事業者は、取り扱う個人情報が多数の利用者やその家族について、他人が容易には知り得ないような情報を詳細に知り得る立場にあるため、個人情報の適正な取り扱いをしなければなりません。
介護事業所における個人情報
介護サービスでは利用者の氏名や住所・電話番号・生年月日といった個人が特定される個人情報と、家族の家庭状況などについての個人情報を扱います。
介護事業所は小規模事業者が多く、IT化や安全管理体制が未整備の事業者が多く存在することも事実です。
「個人情報保護法」においては、原則、取り扱う個人データの数が過去6カ月に一度も5000件を超えない小規模事業者は、個人情報取扱事業者としての義務等を負わないことになりますが、法令上の義務等を負わない場合であっても、情報の不適切な取り扱いにより権利を侵害した場合には、民事責任を問われる可能性もあります。
個人情報漏洩のリスク
介護事業所における個人情報漏洩のリスクは、「介護職員によるもの」「退職職員によるもの」「PC機器からの漏洩」「盗難などによるもの」などです。
介護事業所の個人情報保護は、厚生労働省が「医療・介護関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」を示して、その内容を遵守するように求めています。
特に、要介護高齢者は個人情報についての意識が低いことが多く、取り扱いに疑問をもってもそれを表出する手段をなかなかもてません。
個人情報保護に関するビジネスには、介護職員の意識向上のための教育研修、情報漏洩を起こさないための仕組みづくりなどがあります。