親の経済力を計算して介護計画を立てよう
親の経済力を計算して介護計画を立てよう
親が要介護状態になったとき、家族の中で誰が介護を行なうか、どのような形で行なうか、誰が経済的な負担をするのかなど、さまざまことを決めておく必要があります。
その際に必ずしておきたいことが、親の経済力の計算です。
介護サービスにはお金がかかります。
以前にも述べましたが、子どもに経済的な余裕があれば別ですが、親の介護は親のお金でまかなうことが原則です。
介護を行なうには、それでなくてもかなりの肉体的及び精神的なストレスがかかり、限界を超えると親子共倒れということにもなりかねません。
子どもの生活や人生に負担をかけるのは、親としても本望ではないはずです。
そのためにも親の経済力を事前に把握しておきましょう。
高齢者の経済力とは
では、高齢者はいったいいくらくらいのお金をもっているのでしょうか。
平成28年に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の現況」によると、65歳以上の人世帯あたりの平均貯蓄額は2386万円でした。
日本の全世帯の平均貯蓄額は1327万円ですから、高齢者はお金をもっているということになります。
夫が65歳以上、妻が60歳以上における高齢夫婦の無職世帯の実収入は、1カ月で22万2834円でした。
これが60歳以上の単身世帯となると、12万3325円となります。
多くの高齢者が貯蓄を取り崩していますから、毎月の取り崩し額と多くは年金による実収入を足した額が、高齢者がひと月に使えるお金となるわけです。
貯蓄からの取り崩し額はどうして算出すればいいのでしょうか。
これは若干シビアな考え方をもとにした計算となりますが、親の寿命を想定しなければなりません。
簡単にいえば、あと何年、親が生きるかという年数です。
例えば、親が75歳だとしましょう。
90歳まで長生きすると想定すれば、あと15年あります。
貯蓄額が2000万円とすれば、それを15で割ると、1年あたりの額は約133万円ですから、1カ月にすれば、約11万円です。
これに平均の実収入を加えると、1カ月に親が使えるお金はおよそ33万円となります。
これなら「何とかなるか」と思われるかもしれませんが、世の中、そう簡単なことではありません。
これは両親が揃っている場合です。
男性の平均寿命はおよそ80歳ですが、女性ももっと長生きします。
単身になったとしても、夫婦で暮らしていたときと比べて生活費はそれほど変わりません。
ところが、夫が先に死んだ場合、妻がもらえる年金額は半分くらいになります。
親の年金額のシミュレーションは、日本年金機構の年金相談に出向くと教えてくれますが、親と一緒に行ったほうがいいでしょう。
なぜなら、あなただけの場合、委任状を求められるからです、
今は介護サービスのことだけを考えていればいいのですが、そのうち健康状態が悪くなり、医療が必要になってくるかもしれません。
すると、医療費が加算されます。
親の希望も今までは異なることもあるでしょう。
不安なことばかりではありません。
もし、実収入が減り、住民税の非課税世帯となれば、介護費や医療費も安くなりますし、特別養護老人ホームへの入居もしやすくなり、料金も安くなります。
「1カ月に支払えるのはいくらまでです」と正直にケアマネジャーに伝えることで、その範囲内で最高で最良の介護サービスが受けられるようにしてください。
いずれにしても、将来のことですから、不確定要素が少なくありません。
それでも、そのときになって慌てないように、親の経済力を勘案して介護計画を事前に立てておくことです。