成年後見人になる?
成年後見人になる?
親の預金などが自由に引き出せないときの対応策として、キャッシュカードや代理人カード、委任状、預り金などを提案してきました。
確かに高齢者を騙す人は少なくありません。
それを防ぐためにも、認知症ともなれば、銀行口座は凍結されます。
田舎などでは、金融機関の支店長と昔から懇意にしていることもあり、支店長の判断で引き出せることになるかもしれませんが、一般的には難しいといえるでしょう。
世の中には、判断能力に問題があったり経験が乏しかったりすることで、契約や法律上の約束を守ることが困難な人がいます。
それらの人を制限行為能力者と呼びますが、制限行為能力者の中でも判断力が常にない人のことを成年被後見人といい、彼らを保護するのが成年後見制度です。
成年後見人制度では、家庭裁判所によって選定された成年後見人が、認知症などで判断力が不十分になった人の財産を守ったり、相続する際に本人に代わって判断したりします。
家庭裁判所へ成年後見人となることを申し立てると、結果が出るまでは2カ月から4カ月ほどかかると考えてください。
子どもが成年後見人になった場合、親に代わって預金をおろしたり定期預金を解約したりすることが可能です。
成年後見人は主に家族のひとりが、場合によっては弁護士などの専門家がなることも珍しくありません。
一般的に成年後見人はひとりですが、必要となれば、二人以上の者が成年後見人になることもあります。
例えば、家族が生活の援助を、弁護士が財産管理などを担当するわけです。
また、家族による不正を防ぐために、監督人が付くこともあります。
「オレオレ詐欺」は犯罪ですが、判断力の弱った高齢者を狙ってさまざまな営業をかけてくるビジネスも後を絶ちません。
そのように本人が不当な契約をさせられたときも、成年後見人は手続きさえすれば、取り消しをすることもできるのです。
介護や治療はいつまで続くかわかりません。
考えていた以上に費用が必要になることもあるでしょう。
そのようなときは、裁判所の許可を得たうえで、本人の名義の家や土地を売却することもできます。
ただし、メリットばかりではありません。
家庭裁判所に申し立てるには、実費分が必要となりますし、それを司法書士に依頼すればその分の料金がかかります。
また、家族が成年後見になったときは無報酬でもかまいませんが、弁護士などの専門家になってもらうと、月額数万円の報酬を覚悟しなければなりません。
しかも、いったん成年後見制度を利用すれば、やめることはできません。
成年後見人は家庭裁判所が選定するため、必ずしも家族が選ばれるとはかぎりません。
例えば、弁護士が選ばれたからといって、申し立てを取り下げることはできないのです。
ただし、2019年に最高裁判所が、「後見には身近な親族を選任するのが望ましい」との判断を示したため、今後は家族が選ばれることが一般的となるでしょう。
成年後見制度には、ここまで説明してきた法定後見制度とは別に任意後見制度があります。
これは、本人が元気なうちに財産管理を任せる旨を公正証書にまとめて、代理人を指名しておく制度です。
本人が交わした不当な契約の取り消しはできませんが、裁判所の許可なしで本人の不動産の売却ができます。
親が高齢になってきたら、親が判断力を失ったときのために、将来の話をしておくことです。それだけでなく、契約書のような書類を作り、公正証書にしておいてはどうでしょうか。