親の経済力を把握しておきましょう
親の経済力を把握しておきましょう
これまでにこんな例がありました。
その人は親とほとんど縁を切った状態でした。
父親は亡くなり、残された母親が実家でひとり暮らしをしていました。
ある日、その母親が要介護状態になったという連絡が、母親が住む自治体から連絡があったのですが、息子であるその人は「お任せします」とだけ答えて電話を切ったといいます。
母親は近くの特別養護老人ホームへ入居して、数年後、その施設で亡くなりました。
その間、息子は一度も会いに行っていません。
すると、また地元の自治体から連絡がありました。
なんと、母親の預貯金を預かっているとのことでした。
母親には、ご主人の遺族年金と自身の老齢年金が入り、そこから介護にかかった費用などを差し引いた額が預金として残っていたのです。
しかも、晩年は認知症が進み、ほとんどお金を使わなかったこともあり、定期的に振り込まれていた年金が溜まり続け、預金の残額は1000万円以上になっていました。
その息子は、何ら介護をしてこなかったばかりか、介護などにまつわる手続きもしてこなかったにもかかわらず、母親が残したお金を相続したといいます。
この息子のように1円たりとも金銭的な負担はしないのはどうかと思いますが、介護自体が肉体的にも精神的にも負担を強いられることは否定できません。
さらには経済的負担も相当なものになります。
特に、遠距離介護となると、なおのことです。
中でも、現在のような経済状況になると、自分自身の生活を維持するだけでもたいへんであり、さらには親の介護による経済的な負担がのしかかるとなると、子どもの生活が破綻しかねません。
親子共倒れということにもなります。
親には育ててもらった恩があると考える人は少なくありません。
しかし、親の介護は親自身のためであり、それにかかる費用は親が負担するべきです。
あなたは生活に余裕があるのなら話は別ですが、そうでないのなら、介護にかかるお金は親に出してもらいましょう。
決して親不孝なことでもありませんし、まわりから批判されることでもありません。
介護にお金がかかることは事実ですから、親に介護が必要となったら、理想論や感情論ではなく、現実的に考え、まず、親の経済力を知ることです。
経済力とは、親がもらっている年金額をはじめとして、預金の額、保有している株などの有価証券や不動産のことと考えてください。
これらのことを把握しておかなければ、親が正常な判断力があるうちは、自身で希望を伝えることもできますが、もし、認知症になったりして正常な判断能力がなくなったとき、その後の介護サービスや医療を決めるのはあなたとなります。
介護サービスも医療も料金や治療費などはさまざまあり、そのときの経済力を勘案して決めなければなりません。
そのためにも、親の経済力を知っておくことは重要です。
また、医療保険の有無やその詳細も知っておくことをお勧めします。
親の経済力を確かめるには、これらのことを直接親に尋ねなければなりません。
介護が必要になったとたん、財産の相続を狙っているのかと疑われたり、気分を害されたりするかもしれませんが、お金目当てかどうかはあなたの態度次第でしょう。
そこはあなたと親との信頼関係が大きくものをいいます。
真摯な態度で話し合えば、きっと理解してくれるでしょう。