介護事業における労災

介護事業における労災

介護従事者は、職場の上司や同僚、利用者、そして、その家族など、人間関係の複雑な環境の中で、ストレスの蓄積しやすい環境にあります。

「きつい」「汚い」「危険」の3Kの職場ともいわれてきました。

労働者が業務中にケガをしたり、病気になったりすることを労働災害、略して労災と呼びますが、介護従事者にも介護業界ならではの労災が起こります。

労災補償内容に見る介護事業のリスク

厚生労働省は、2019年度における過労死をはじめとした労災補償状況を公表しました。

公表によると、請求件数や支給決定件数が前年度に比べて増加したことが判明しています。

そのうち、労働によってうつ病などの⼼の病になったという精神障害に関する労災の請求件数は、統計が始まった1983年以来、最多となる数となっているのです。

業種別で見ると、最も多いのは「医療・福祉」が最多となっています。

このことから、医療・福祉分野で働く人々は、心の病になる危険性が高く、その種の労災に直面する可能性が他業種に比べてかなり高いという現状が表面化しました。

心の健康の保持増進に関するビジネス

冒頭で述べましたが、介護従事者は、普段からさまざま人と接します。

しかも、要介護者とはとても密に接するわけです。

要介護者にもさまざまな事情を抱えている人がいますし、認知症患者ともなると、接し方も難しく、中には、介護従事者に対して暴言を吐く高齢者もいます。

さらには、その家族ともつきあっていかなければならず、家族の中にはクレイマーもいますから、その対応はかなりのストレスになっているはずです。

加えて、介護サービスの中でも訪問介護を行なう訪問介護員は、直行直帰の勤務形態が多いこと、一人で業務を遂行することが多いことなどから、ストレスが精神的な疲労となりやすいといわれています。

訪問系サービス従事者の労働条件・仕事の負担についての悩み・不安・不満等の上位5項目のうち、「精神的にきつい」は第4位となっており(34. 2%)、「身体的負担が大きい」(第5位:30. 9%)を上まわりました。

身体介護は重労働ですから、身体的負担が大きそうに思えますが、実際は、それ以上の精神的なダメージにさいなまれているのです。

労働安全衛生法の改正により、労働者が50人以上の事業所では毎年1回、ストレスチェックを実施することを義務付けましたが、小規模事業者の多い介護事業所までには広がっていません。

利用者の苦情から考える介護のリスク

利用者の家族などから寄せられるクレームが、介護従事者の心にダメージを与え、労災の要因になっていることはすでに述べましたが、介護保険制度では、サービスについての苦情を処理する仕組みが制度的に位置付けられており、サービス事業者や市町村、国保連合会などが利用者からの苦情への対応を行なっています。

ここでは具体的な苦情の内容をみてきましょう。

苦情相談白書にみる苦情内容の特徴

福祉・介護サービスは、公共サービスの一つとして位置づけられていることから、法令において「苦情解決のしくみ」が構築されています。

介護保険サービスで苦情の申し出窓口とされているは、「サービス事業者」や「保険者」、「国保連合会」です。

東京都国保連合会では、寄せられた苦情の事例や統計情報を取りまとめた「東京都における介護サービスの苦情相談白書」をホームページに掲載しています。

それによると、サービス提供や保険給付に関する苦情1,644件のうち、令和元年度に苦情件数の多いサービスの種類は、「居宅サービス」・「施設サービス」であり、居宅介護支援の387件(23.5%)、次いで介護老人福祉施設の233件(14.2%)の順となっています。

どんな苦情内容が多いのか

サービス提供・保険給付に関する苦情内容別では、合計1,644件のうち、サービスの質491件(29.9%)、従事者の態度323件(19.6%)、説明・情報の不足268件(16.3%)で6割以上を占めました。

過去2年間のデータとあわせみても、「サービスの質」の割合が最も高く、次いで「従事者の態度」の割合が高くなっています。

こうした背景もあり、介護事業者では職員に対して「マナー研修」や「サービス研修」が行なわれているのです。

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