おいしくて健康的な食事とは
おいしくて健康的な食事とは
ある男性高齢者Aさんの話です。
Aさんは若いときから糖尿病を患っており、お医者さんから食事療法をするように指導されていました。1日に1200カロリーしか食べられないというかなり厳しいカロリー制限でした。
それまでは、食事を作っている奥さんに任せていればよかったのですが、70歳を過ぎて奥さんを亡くしてからは、苦労し始めます。
果物ならそれほどカロリーは高くないだろうと思い、あるときから大好きだった柿ばかりを食べていたところ、驚くほど血糖値が上がってしまいました。
確かに、揚げ物などと比べると、果物のカロリーはそれほど高くありません。
しかし、血糖値を上昇させるのは、カロリーではなく、実は糖質なのです。
果物の中でも柿は糖質を豊富に含んでおり、それを毎日食べていたものですから、血糖値はそれが正直に反映した結果となりました。
お医者さんからきつく注意され、さらに栄養士さんによる栄養指導を受けて、今度は糖質をできるだけ避ける食生活を始めました。
何とか血糖値は下がりましたが、長年の糖尿病によって、腎臓の機能が悪化してきました。
糖尿病が恐ろしいのは、さまざまな合併症が起こるからです。
糖尿病性腎症はそのひとつで、この病気にかかった場合は、血圧と血糖値をコントロールすることに重点を置き、加えてタンパク質を制限します。悪化した腎臓の数値を改善させるための薬は残念ながらありません。
Aさんは再び栄養士さんの栄養指導を受けたのですが、カロリーや糖質の制限とは比べものにならないくらい難しいものでした。
食べ物はそれぞれ栄養素を含んでいますが、食べ物別に含まれるタンパク質の量は異なります。
よって、食事ごとに、料理に使う食べ物の重さをまずはかり、その重さからタンパク質の量を推定しなければなりません。
Aさんの場合、1日に摂取できるタンパク質の総量はなんと30グラム。この範囲の中でしか食べることはできません。
栄養士さんの栄養指導を受けたときは「がんばってみます」と言ったものの、そのやる気は1週間ももちませんでした。
70歳を超えてから一人暮らしとなったAさんにとっての自炊、しかもタンパク質まで制限しなければならず、とても続けられるものではありません。
独居老人は増えており、この種の悩みを抱えている人も増えてきています。
その悩みを一発で解消してくれるのが宅配弁当です。それも持病をもつ人への宅配弁当があります。
「病気をもつ人」のための食事といえば、病院で入院患者に出される病院食を想像する人がいるかもしれません。「まずくて冷めている」というのが病院食の定番のイメージです。
例えば、「減塩食」は、塩分が制限されているわけですから、どうしても「味がしない」「物足りない」と感じてしまいます。
ところが、時代は変わりました。この種の宅配弁当も進化しているのです。
一般的な弁当とほとんど味は変わりません。それどころか、「おいしく」なっているのです。
もちろん、電子レンジで温めれば、温かい食事を堪能できます。
メニューも豊富にあるので、毎日違ったおかずを選ぶこともできますし、価格もワンコイン(500円)のものもあり、驚きです。
塩分やタンパク質を制限するなど、各種の病気に対応した弁当も揃っています。
毎日配送されるコースもありますから、独居老人の場合、「安否確認」の役割も担っており、別居している子どもにとっても安心です。
「うちは母親がいるから大丈夫」という方も気をつけなければなりません。
認知症には、料理の献立を考えるのが億劫になる、考えられなくなるという症状があり、もし、料理を作っている母親が認知症にかかっていれば、子どもが知らないうちに、同じメニューの食事を続けているということもあるのです。
弁当の宅配だけでなく、家庭に出張して料理をするなど、その他のサービスもあるので、各家庭の事情に応じて検討してみてはどうでしょうか。