日本の危機としての介護問題

日本の危機としての介護問題

介護業界の人材不足は、もはや常態化していますが、人材が集まらないことに悩んでいるのは、介護業界だけではありません。

15歳以上、65歳未満の生産年齢人口が1990年代を峠にして減少し続けており、その中でも労働の意志と能力をもつ労働力人口も減り続けているのです。

日本全国で急速に進む「働き手の不足」と「高齢者の高齢化」問題は、高齢者が要介護状態になっても、行き場を見つけるのが極めて困難な大量の介護難民を生じさせる可能性があります。

介護保険財政の逼迫

そのような中、介護危機になるとして懸念されており、とりわけ差し迫っているのが財政問題です。

団塊世代がすべて後期高齢者となる2025年を目前に、日本の社会保障費用は、医療費や介護費の国庫負担が増えるだけでなく、1人当たりの年金受給額も実質的に下がることが予測されています。

特に、介護分野は、費用の伸び率が最も高くなると見込まれ、財源や人材確保が厳しさを増し、「介護危機」と呼ぶべき状況に陥る可能性が高まっているのです。

政府は介護保険財政の逼迫に関して、短期的には介護報酬を抑えることで対処しようとしています。

介護報酬とは、介護事業者が利要介護者、要支援者に介護サービスを提供した場合に、対価として事業者に支払われる報酬のことです。

原則として、介護報酬の7割から9割は介護保険から支払われ、1割から3割は、利用者の自己負担となります。

しかし、介護報酬抑制はただでさえ事業運営における人材コストなどが上昇している中、事業としての採算性が悪化し、事業者の撤退、倒産につながりかねません。

また、利用者負担の割合を上げることも結局は利用者の介護保険サービスの利用控えを生じさせ、事業収入は低下すると考えられます。

2020年1月に東京商工リサーチが発表したレポートによれば、介護事業者の倒産件数は増加しており、政府は介護報酬の改定において増やすのか?現状維持か?下げるのか?という三択を三年ごとに迫られているわけです。

介護従事者の不足

もう一つの介護危機は、働く人(介護従事者)問題です。

2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳で、ともに過去最高を更新しました。

平均寿命伸展の一方で1人の女性が生涯に産む子の推計数である合計特殊出生率は1.42にとどまりました。

今後は要介護者がさらに増加する一方、労働力人口は減少が見込まれるため、介護需要を支える人材不足が顕著になります。

多くの介護事業所において人手が不足している要因は、新規採用が困難だからなのです。

その理由は、介護に対するネガティブなイメージ(身体的にも精神的にもきつい仕事であるにもかかわらず、介護職員が低賃金で社会的評価も低いこと)が定着してしまったことが主な要因といわれています。

そして、今後増大する介護需要を担う働き手の不足は、親の介護のために離職する「介護離職」にも繋がり、介護問題が日本社会に深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。

この危機を解決するための方法として、短期的には外国人介護人材の活用、長期的には家族が行なう家族介護給付の検討、ICTやロボットの活用を高め医療・介護サービスの人的依存度を引き下げると同時に、介護保険法令で定められている人員基準の緩和などが考えられます。

ちなみに、ICTとは、情報通信技術の略で、通信技術を活用したコミュニケーションのことです。

情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称となっています。

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