「預かり金」ってナニ?
「預かり金」ってナニ?
前回、親の預金を引き出すにあたって、委任状がなければ簡単に出金できないことを述べました。
もちろん、ルールに従って、一つひとつクリアしていけば、出金できますが、その手間はかなりたいへんです。
そこで「預かり金」という方法を提案します。
親のお金を口座から引き出さなくても、これから子どもに面倒をみてもらうことになれば、「介護にかかった費用や帰省する際の交通費に使って」と前もって親からまとまったお金を子どもに渡すということも珍しくありません。
これならその都度、苦労して口座からお金を引き出さなくてもすむというわけです。
いっけんすると、子どものころにもらった親からのお小遣いと同じだとは思いませんか。
そのように考えてはいけません。
もし、親からもらったお金の全額を介護にかかった費用に使った実費分ば贈与とはなりませんが、他の用途に使ってしまえば、それは贈与とみなされ、贈与税を支払わなければなりません。
また、不幸にして親が亡くなった場合、もし、もらったお金が残っていたら、それは相続税の対象となります。
だから、まとめてもらうよりも、必要なときにその都度出してもらい、もらったお金は使いきってしまうのがいいでしょう。
いずれにしても、どんぶり勘定は感心しません。
できれば、親からもらったお金は別にしておくといいでしょう。
例えば、新規の口座を開設して、そこで保管しておき、親からお金をもらう際は、この新しい口座へ振り込んでもらうようにします。
そして、その口座のお金は介護にかかった費用にしか使わないようにしてください。
これが「預かり金」です。
現金や預金だけを見れば、誰のお金なのか、何に使うためのお金かはわかりません。
そこで、親とあなたの間で覚書を残しておきます。
覚書とは、契約書と同じで、公的文書のひとつです。
契約書と似ていますが、覚書は双方が合意した事項だけをまとめた文書といえます。
契約書の内容に変更があった場合、再度、契約書を作り直すよりも、変更した事項だけを覚書として交わすことができるわけです。
覚書を交わした双方の合意があるとみなされたときは、法的拘束力をもちますが、逆に、合意がないとみなされたときは、法的拘束力は生じません。
一般的に覚書は、表題や前文、本文、後文、覚書作成日、当事者の氏名と住所によって構成されます。
基本的に、双方とも自筆でなければなりません。
ただし、当事者が何らかの理由で記入できないときは、代筆による記名でも認められますが、その際は本人の拇印が必要となります。
それによって、覚書は正式な書類として認められるわけです。
作成した覚書は、その後も大切に保管しておいてください。
親からもらったお金を預り金とするとき、そしてそれを使うときは、覚書以外にも出金記録も残しておかなければなりません。
出金記録があることで、逆に預り金として説明することができます。
介護にかかった費用は、明細や領収書も残しておくべきです。
何やら親子の間なのに他人行儀だと思われるかもしれませんが、例えば、兄弟がいる場合などは、あなたが親のお金を自由に使っているのではないかと疑われることもあります。
そのような疑念をもたれないためにも、お金にまつわることはすっきりしておくほうがいいでしょう。
もちろん、兄弟には介護にかかる費用は預り金から出していることを伝えておくことです。