認知症高齢者700万人の衝撃

認知症高齢者700万人の衝撃

世界的な認知症者数の増加と社会的コストの増大が懸念され始めました。

そのような中、超高齢化社会となっている日本は認知症大国になる可能性が高まってきました。

今後は、認知症の発症リスク低減や、患者中心のケアを重視しなければなりません。

2025年認知症高齢者700万人の理由

平均寿命が延びて高齢者の数が増える中で、全世界でも日本においても認知症患者が増加してきました。

厚生労働省が2015年1月に策定した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」によると、2012年に462万人だった日本国内の認知症の人数は、2025年に700万人に増加するようです。

この700万人は、長期の縦断的な認知症有病率調査を行なっている福岡県久山町のデータをもとに、筑波大学の研究報告による2012年における認知症の有病者数462万人にあてはめた数字が根拠となっています。

これは「65歳以上高齢者の約5人に1人が認知症」ということを意味しており、もはや認知症は医療や介護だけに限った問題ではなく、国家全体で取り組むべき課題となっているのです。

認知症の社会的コスト

認知症高齢者が増加する中、日本においては認知症の社会的コストについてこれまで十分な推計を行われていませんでした。

研究報告によると、2014年の日本における認知症の社会的コストは14.5兆円で、その内訳は医療費が1.9兆円、介護保険費が6.4兆円、家族などによるインフォーマルケアコストが6.2兆円であることが明らかになりました。

なお、社会的コストとは、医療機関に支払う直接医療費をはじめとして、制度に基づく福祉サービスであるフォーマルケアコスト、家族や友人、地域住民、ボランティアなどによる制度に基づかない非公式な支援のインフォーマルケアコストが含まれます。

調査結果によると、認知症では医療よりも介護の比率が極めて高いこと、インフォーマルケアコストの占める割合が介護保険に匹敵する規模であることがわかりました。

このことは、認知症は介護の担う役割が大きいことを意味しています。

ちなみに、認知症を根本的に治す薬は世界中の研究者や製薬会社が競争を繰り広げていますが、ここ数年開発中止が相次いでおり、中には、アルツハイマー病の進行を抑える新薬が日本の製薬メーカーによって開発されたというニュースはあるものの、薬を使用しない「非薬物療法」にも注目が注がれているところです。

その中で筆者が関心を寄せているのが、オランダにある認知症村・ホグウェイ(Hogewey)です。

認知症患者のみが居住する小さな「認知症村」であり、敷地内に住居建物のほか、劇場やスーパー、外来クリニック、美容院、カフェやレストランなど生活に必要な施設がそろっています。

認知症にやさしい共生社会へ

2019年6月には新オレンジプランの後継となる認知症施策推進大綱において、「共生」と「予防」が二本柱に据えられました。

認知症の人とその家族が暮らしやすい社会を作るためには、住まいの確保などハード面の整備と買い物や食事、地域活動や見守り体制などソフト面の整備支援が必要で、官民連携による対応が不可欠です。

認知症は本人のQOLを低下させるとともに、介護保険サービスの費用増加、介護保険だけではカバーしきれない家族の負担増加、介護離職の増加などが考えられ、こうした課題を解決できる製品やサービスが求められています。

QOLとは、Quality of Life(QOL)のことで、「生活の質」とも訳しますが、本人の肉体的や精神的、社会的、経済的を含めた生活の質を意味し、患者が自分らしく納得のいく生活の質の維持を目指すという考え方です。

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