まず実家に帰って親に会おう!
まず実家に帰って親に会おう!
ホームヘルパーとも呼ばれるある訪問介護員の方から聞いた話です。
その方は、一人暮らしのおじいさんのもとへ週に一度訪問をしていました。
依頼してきたのはおじいさんの息子さんで、この親子は別居しているものの、お互い都内に住んでいました。
ところが、息子さんは父親に会おうともせず、すべてをその訪問介護員が勤務する事業所に任せっきりでした。
ある夏の日、いつものように訪問すると、部屋の中がサウナのようになっていました。
エアコンをつけたものの、冷房ではなく、暖房になっていたのです。おじいさんはそれに気づかず、汗びっしょりで布団の中にいました。
当然のことですが、息子さんに報告しました。
しかし、それほど驚くわけでもなく、「了解しました」とだけ言って電話を切ったといいます。
この息子さんは、高学歴の一流商社マンでした。知性も教養もあり、介護に関する情報ももっているようでした。
それでも積極的に介護に関わろうとはしません。
これは極端な例と思われる方もいるでしょう。ところが、そうでもないのです。
同じ都内に住んでいる場合でもこのような例はあるのですから、親は田舎に住んでいて、子どもは都会で仕事をしているとき、つまり遠距離介護の場合は、なおのこと、このようなことは起こります。
子どもたちにはそれぞれ事情があるかもしれませんが、親に介護が必要になったときは、一度は親元を訪ねていただきたい。
親の状態を自分の目で確かめて、どのような種類の介護が必要か、親はどのような介護を希望しているか、親の要介護度や経済的な事情を考慮すると、どのような介護が可能かなどを検討してほしいのです。
できれば、親に会う前に、自分自身で介護に関する情報を集めておいてください。
その後、実際には地域包括支援センターへ相談に出向くわけですが、その際にある程度の知識や情報をもっていたほうが、相談や交渉も円滑に進むでしょう。
要介護状態になった高齢者のほとんどが何らかの疾患を抱えています。
通院や場合によっては入院が必要になることもありますが、病気の概要や治療法を高齢者が理解できるとはかぎりません。
インフォームド・コンセントやアカウンタビリティーといったことが医療分野では重要視されるようになりました。
医師には、患者への説明と同意が必要となり、医師にはその責任があるとされてきたのです。
よって、患者に病気のことをわかりやすく説明する責任が医師にはあるのですが、医師によっては専門的な医学用語を多用することもあり、それが高齢者に理解できるか。
もし、軽い認知症が始まっていたらなおのことです。
そういった面でも、やはり子どもが付き添い、じっくりと医師の説明も聞き、理解し納得しなければ、親にとって最良の治療や介護を受けることはできません。
医師の説明が難しいと感じたなら、大きな病院には相談窓口がありますから、そこで改めて説明を受けてもいいでしょう。
前述の訪問介護員のように、日本の場合、良心的な職員が多く、できるかぎりの介護をしてくれますが、他人任せにしてはいけません。
離れて介護をするときは、まず親元へ帰って、手続きなどもできればあなた自身でやっていただきたいものです。