確実に訪れる多死社会への準備
確実に訪れる多死社会への準備
2040年多死社会の到来
現在の日本は超高齢社会といわれています。
平均寿命は世界一で、“ご長寿”はめでたいことです。
しかし、さまざまな問題を抱えていることも否定できません。
そして、日本の超高齢社会は2040年から多死社会へ突入すると危惧されています。
介護ビジネスにおいては、本人の意思決定とその支援が大きなテーマになるのです。
2040年の風景
日本の人口の中でもボリュームゾーンが大きい団塊世代高齢者は、2035年に85歳代、2040年に90歳代になります。
厚生労働省が発表している簡易生命表(2018年)によると、男性では26.5%、女性では50.5%の人が90歳代まで生きることになるのです。
2040年は要介護者の増加は当然のこととして、さらに、 1000万人を超える85歳以上の高齢者が、単身者も含め、地域生活を送ることになります。
このことは単に医療・介護サービスの需要が増えることを意味するだけでなく、介護は必要なくても、生活のちょっとした困りごとを抱える高齢者がこれまでにない規模で増加することを意味しているのです。(地域包括ケア研究会2019)
さらに、2040年代には平均寿命に到達する団塊世代の年間死亡者数が現在の1.5倍である167万人にのぼると推計されています。
日本は諸外国に比べて「病院死」の比率が約80%と高いことが特徴です。
死亡者数の増大で病院のベッドが不足することになり、“死亡場所”の不足も予測されています。
厚生労働省によると、2040年には約41万人の看取り場所が足りなくなると推計され、このままでは「最期の時を迎えても死ぬ場所がない」高齢者が発生することになるでしょう。
これらの人たちは”看取り難民”となってしまいます。
ただし、今後多くの死者が発生するという理由で新たな入院施設を整備することは財政上の制約などで困難であることも事実です。
国は病床数を減らし、特別養護老人ホームへの入所基準を厳しくし、病院・施設から地域・在宅への転換に踏み出そうとしています。
看取りは介護職員の精神的負担が「大きい」
国が在宅での看取り比率を上昇させようとしているのは、病院医療に比べて在宅医療にかかる経費が少ないという理由からです。
国は住み慣れた地域で最期の時を迎える人々が急増することに備え、医療・介護・生活支援を一体的に提供できる「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
介護分野では介護保険制度による介護報酬の評価もあり、看取り介護を実施する介護施設が増えてきました。
ただし、看取りケアに関する教育が職員に対して十分にできていないことも明らかになっています。
そして今後はもう一つ、宗教的な問題も考えなくてはなりません。
それは、患者や家族に寄り添って心の問題をケアする「スピリチュアルケア」のことです。
宗教者らが病院や介護施設に常駐している光景は、欧米ではよく見られます。
ところが、残念ながら日本の病院や介護施設では、宗教者が出入りすることをこれまで忌避する傾向にありました。
日本でも多死社会の到来に備え、宗教者を受け入れ始めている病院や介護施設もすでに現れています。
介護ビジネスも「ビジネス」であるかぎり、利用者のニーズとマーケットのトレンドの変化に敏感でなければなりません。
介護事業者は、早晩、来たるべき多死社会への対応を迫られるでしょう。
もちろん、いち早く対応した者がビジネスチャンスを掴むことはいうまでもありません。