老人ホームは倒産しないの?
老人ホームは倒産しないの?
比較的低料金で入居できる特別養護老人ホームはすべて市営などの公営だと思っている人が少なからずおられるように思います。
しかし、それは大きな誤解です。
有料老人ホームはいうまでもなく、特別養護老人ホームであっても、すべてが市営などの公営の施設ではありません。
介護サービス事業者が経営していますから、当然、倒産もあります。
そうなると、これから老人ホームへの入居を考えるとき、介護施設の経営状況が気になるというものです。
介護サービス事業所の経営状況
そもそも介護ビジネスは有望なビジネスなのでしょうか?
もっといえば、介護サービス事業者は儲かっているのでしょうか?
日本は超高齢化社会を迎えて、介護市場が拡大することは間違いありません。
市場が大きければ、そこには大きなビジネスチャンスがあるはずです。
それでも介護の現場には人が集まらないとよくいわれます。
仕事がたいへんな割には給料が少ないといわれていますが、本当でしょうか。
現場がそのように思われているなら、事業者にとっても大きな利益を期待できるビジネスではないのでしょうか?
まず何より数字で見ていきましょう。
東京商工リサーチが2018年に発表した「医療・福祉事業の倒産状況」では、医療・福祉事業の倒産件数が過去最多になりました。
全体で249件の中、老人福祉・介護事業がもっとも多い111件となっています。
2016年が108件だったので、状況は改善されるどころか、わずかながら悪化しているといえるでしょう。
2015年の介護報酬改正において、介護報酬が2.27パーセント引き下げられ、介護人材が不足する一方で、介護サービス事業者の増加が大きく影響しているものと思われます。
安易に介護事業を起業したり、参入したりすると失敗することが、事業者側の原因としてあげられており、しかも、それは小規模の事業者によくみられる傾向であることも判明しました。
90年代に入り、バブルがはじけてリストラがブームになりました。
その際、会社が提案する早期退職に応じて、いくばくかの退職金を手にした人が、独立開業をめざしたこともありました。
中には、安易に「ラーメン屋でもやるか」とばかりに店を始めた人もいましたが、そのような場合、たいていは失敗に終わっています。
介護の分野でもそれと同じようなことが起こっているのかもしれません。
それはさておき、経営者の経営能力の乏しさに加えて、介護業界における倒産や厳しい経営状況の原因にあげられるのがやはり業界全体の人手不足です。
例えば、訪問介護事業を始めるときは、訪問介護員とサービス提供責任者、常勤管理者を配置しなければなりません。
それぞれ配置人数の規定もあり、配置人数によって利用者の数も決まるのです。
事業者が売上を高めようと思えば、利用者を増やす必要があり、それには有資格の専門スタッフを一人でも多く配置しなければならず、その確保は容易ではありません。
しかも、小規模では利用者一人あたりのコストが高くなります。
では、介護ビジネスに希望はないのでしょうか?
介護のような制度ビジネスで大儲けすることは現実的ではないでしょう。
しかし、利益を出し続け、安定した経営をすることは十分に可能です。
また、そのような事業者はたくさんいます。
さて、冒頭にあげた疑問に関する答えです。
介護サービス事業者は儲かっているのか?
お世辞にも「儲かっている」と胸を張っていえる事業者はそれほど多くはないでしょう。
特に、有料老人ホームなどは、突然、経営者が代わったり、倒産したりという例は珍しくありません。
その点、特別養護老人ホームが倒産することは稀だと思います。
大儲けはできないものの、介護保険制度に支えられて比較的安定した経営ができているからです。
老人ホームは終の住み家になる可能性があります。
入居して、途中で倒産となれば、それこそ“路頭に迷う”ことになりかねません。
老人ホームを選ぶ際は、施設経営の継続性や安定性などにも注意を払ってください。