フレイル予防ビジネスってナンだ!

フレイル予防ビジネスってナンだ!

厚生労働省が発表した平成30年度の介護保険事業状況報告によると、第1号被保険者の数は約3525万人で、その中で実際に要介護(要支援を含む)認定を受けている人は658万人であり、全体の18.3%に過ぎません。

ここを市場として奪い合うには限界があります。

しかも、介護保険収入にだけ頼っていては事業を発展させることは難しいでしょう。

要介護認定を受けていない人たちは、いちおう自律した生活が送れるわけですが、65歳以上という年齢を考えれば、まったくの健康体であるという人はそれほど多くはありません。

フレイルという状態が注目されてきました。

高齢になっていくとともに、健常な状態から要介護状態へと移行しますが、フレイルとは、健常な状態と要介護状態の中間的な状態をいいます。

脳卒中などの病気や転倒などの事故によって要介護状態になる高齢者が一般的に多いと思われています。

ところが実際には、年齢を重ねていくと、筋力が弱まったり、疲れやすくなったりすることから、どうしても家に閉じこもりがちになり、徐々に要介護状態になることが少なくないようです。

フレイルは、このような肉体的な衰えをはじめとして、認知機能障害やうつなどの精神的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題なども含めた概念なのです。

フレイルの時期には、肉体的にも精神的にもダメージを受けると回復が困難になってきます。

しかし、早期に適切なサポートを受けることで健常な状態に戻すことも可能だといわれており、フレイルに陥らないための予防だけでなく、いったん受けたダメージを回復させることも重要です。

これらをフレイル予防ビジネスと呼んでいいでしょう。

東京都健康長寿医療センターの調べによると、フレイルに陥っている人は約307万人に達するものと予測されています。

フレイル予防ビジネスはすでに始まりました。

身体的社会的精神心理的と大きく分けて3種類あります。

まず、身体的にサポートするビジネスとして注目されているのが低栄養・食事サービスです。

低栄養とは、タンパク質制限食や減塩食などのこといいます。

心臓病や腎臓病、高血圧、糖尿病など、利用者の健康状態に応じたメニューを提供しており、単なる食事サービスではありません。

日本人の死亡原因の上位に肺炎があります。

中でも、食事などが食道ではなく、誤って気道へ入ってしまうことで発症する誤嚥性肺炎に高齢者は気をつけなければなりません。

誤嚥性肺炎は口腔機能の低下によって引き起こされます。

そこで、咀嚼力を改善させる咀嚼チェックガムが人気となっており、フレイル予防ビジネスの中でも欠かせない存在になってきました。

生涯にわたって未婚を貫く人が男女ともに増えており、今後、高齢者の独居の増加は止めることができません。

一人暮らしになると、どうしても日々の会話の機会が減り、加えて、自宅に閉じこもってしまった場合、社会から孤立することになります。

これが認知症を誘発することも珍しくありません。

よって、フレイルの社会的なサポートビジネスにおいて、「閉じこもり防止」や「集まりの場の提供」は大きなキーワードです。

アメリカでは、高齢者に向けて“ビジネスをする場所”となるコワーキング施設を提供する企業が登場しました。

ここでは、高齢者がハンドメイドで作ったものを販売するなどのスモールビジネスが行なわれており、すでにアメリカ全土165カ所で展開しています。

フレイルビジネスの3つ目は精神心理的な分野ですが、この分野でもっとも重要視されているのが認知症対策です。

認知症には至らないまでも、その一歩手前であるMCI(軽度認知障害)が話題になっています。

この段階ならば、健常な状態に戻すことが場合によっては可能だからです。

また、認知症が進行しないように、悪化しないようにするには、MCIの段階で早期発見して、早期に治療を始めることが求められています。

認知症患者をサポートしているのは、医療だけではありません。

例えば、認知症カフェがあります。

その名のとおり、お茶や軽食を楽しめるカフェですが、それだけではなく、認知症患者やその家族の交流や情報の提供が行なわれているのです。

これはオランダで誕生した「アルツハイマーカフェ」がモデルとなりました。

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